高齢者の難聴
高齢者の難聴について
加齢が原因の聴力障害を老人性難聴といいます。
一般的には「耳が遠くなった」といわれる状態です。感音難聴が多い。
聴力に関係する細胞の減少や老化が原因となり聴力が低下していきます。
個人差が大きく、40代50代から補聴器が必要になる方もいますが、80代を超えてもしっかりと聞こえる方もいます。
難聴の種類
難聴には外耳から中耳の問題による伝音難聴、内耳、蝸牛神経、脳の問題による感音難聴、2つが合併した混合性難聴があります。
音が聞こえるしくみ
※メディカルイラスト図鑑引用
空気の振動である音は、耳介によって集められます。
外耳道を通って鼓膜に届き、音は鼓膜を振動させ、鼓膜の振動は耳小骨によって増幅され、内耳の蝸牛(かぎゅう)という器官に使わります。
蝸牛で音の振動が電気信号へと変えられ、蝸牛によって変換された電気信号が脳に伝達されます。
そして脳にある聴覚野という部位で音として認識されます。このように、空気を伝って鼓膜を振動させ聴覚神経に伝わる音を気導音といいます。
老人性難聴の特徴
老人性難聴の特徴は単に「音」に対する聴力が低下するだけではなく「言葉」に対する聴力が低下するのが大きな特徴です。
例えば時計のアラームや車のクラクションの対する聴力低下が軽度であっても,会話の聞き取りは著明に低下します。会話のスピードが速くなるとこの傾向が強くなります。
相手が何か言っているのは分かるが,何を言ってるのかは分からないと訴えることが多いことからも実感できます。
また,静かな空間で、1対1で目を見て、集中しておしゃべりをするとよく会話ができるという状況もあります。
これは,老人性難聴では騒音下において言葉の聞き取りが悪化するという特徴と、高齢者ほど会話中に入ってくる余計な音に気を取られ易い、集中力の低下があることも関係しています。
難聴によるリスク
聴力の低下は日常生活にさまざまな影響をあたえます。
〇認知症
聴力の低下により聞き取りにかなりの集中力を要する。脳に負担がかかります。
〇うつ病
聴力の低下によりうまく会話ができない、人と話をしたくないなどの精神的不安からうつ病になってしまう場合があります。
〇交通事故、怪我
聴力の低下により外部からの情報が減少し、車の接近に気がつかないことで交通事故にあったり、平衡感覚の低下により転倒などの怪我につながることもあります。
老人性難聴の対処方
まず、老人性難聴の方に会話を理解してもらうためには、大きな声で話すだけではなく、ゆっくり分かりやすくはっきりと話すことが重要です。
現時点で老人性難聴者を総合的かつ簡便に改善させる方法はありません。
現在最も簡便な方法は補聴器を利用することです。早めに補聴器を使用した方が生活の質の改善につながるという研究結果があります。
補聴器
補聴器を使用している方の中には補聴器が合わない、何個も買ってみたが今は使っていないという方を多くみかけます。
①現在の難聴は補聴器によって音を大きくすれば完全に解決するわけではないこと
②少しずつ時間をかけて複数回の調節が必要であること
③補聴器からの音に順応させるために自らが使いこなすための努力をしなくてはならないこと
補聴器を使用する前に説明し、高齢者にある程度の心構えをしてもらい、数カ月かけて高齢者とともに調整を続けていくことが必要です。
説明なしに補聴器を勧めると、装用感と期待との間に大きなギャップを生じ、その結果、補聴器を使用し始めても、すぐに使用をあきらめてしまう例が多くみられます。
使用者の周囲の人にも、補聴器を付けている人に大声で話しかけるとかえって不快に感じることがあること、大きくではなくゆっくり話しかけてあげることや、騒音がなるべく少ない環境で会話を楽しめるようにアドバイスできるとさらによい結果を生みます。
補聴器を使用しながら、人とのコミュニケーションを積極的にとり、認知機能を保てる生活習慣を続けることが大切であることを、使用者とその周囲の方にも伝えることが重要です。
ひろみのひとこと
介護サービスを利用している利用者さまの中には、会話が聞き取りづらい方が多くいます。
会話が成立しにくく、時間をとられてしまうのも現実ですが、個々の能力を見極め対応していくことも、介護従事者の力であると思います。
ご本人の疲労感なども考えながら、積極的にコミュニケーションを取れるよう周りの理解が必要だと思います。
また補聴器を使用していない方や、使用したがやめてしまった方にも、適切なアドバイスをする必要があると考えます。